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シャント抵抗と発熱の関係

iPhoneからノートパソコン、電球から電気自動車まで、日々の生活の中で「電気」はなくてはならない存在となっております。電気機器を使っていると、本体が熱くなる現象は皆様経験されたことがあるのではないでしょうか。これは物質に電気が流れる際に、流れにくさである「抵抗」をうける事で電気が流れている物質が発熱してしまっているためです。
そんな皆様の日常にあふれる「電気と抵抗」の関係性を、「シャント抵抗」の切り口からご紹介させていただきます。

抵抗と発熱とは?

電気機器に電気を流すと本体が発熱することを述べさせていただきましたが、この現象を説明するためには「ジュールの法則」をご紹介する必要がございます。これは、「導線に定常電流を流すと、一定時間内に発生するジュール熱の量は電流の大きさの二乗と導線の抵抗に比例する。」という法則です。この関係性は次の式で表されます。

J=I²・Rt

J:熱量量(J ジュール熱)

I :電流値(A アンペア)

R:抵抗値(Ω オーム)

t:時間(単位 秒)

導体にはそれぞれ固有の抵抗があるため、用途にあわせた導線や抵抗値を選定する必要がございます。電気を活用する際に、電気と発熱は切っても切り離せない関係であるため発熱を加味した製品設計を行う必要がございます。

測定原理と発熱のメカニズム

先ほどジュールの法則についてご紹介させて頂きましたが、シャント抵抗が発熱する原因は、シャント抵抗の電流の測定方法に起因します。別のコラムでもご紹介させていただきましたが、シャント抵抗は回路に直列に接続し、抵抗両端の電圧降下を用いて電流の測定を行います。シャント抵抗で電流測定を行うために抵抗に電流を流し、熱が発生してしまうのです。この抵抗に電気が流れることで生じる熱を「抵抗発熱」と呼びます。抵抗を用いて電流測定を行う場合は抵抗発熱が必ず発生してしまうため、設計段階で十分な対策が必要となります。

シャント抵抗の発熱影響

この「発熱」がシャント抵抗を活用する上で様々なネックになってしまいます。こちらではシャント抵抗の発熱が与える影響についてご紹介させていただきます。発熱が与える大きな影響として「大電流の測定が難しい」という点が挙げられます。抵抗に電流を流した際の温度上昇量は発熱量に比例します。抵抗値が5倍になれば同様に温度上昇量も5倍に、電流値が5倍になれば温度上昇量は25倍にもなってしまいます。そのため大電流が流れる回路では発熱量が大きくなってしまうため、抵抗を用いた電流測定は不向きといわれております。同じ電流を流す際に、発熱量を抑えようと思うとシャント抵抗の抵抗値を小さくすれば良いのですが、抵抗値が小さくなるとシャント抵抗の両端の電圧降下も小さくなってしまいます。オペアンプなどの増幅装置を利用することで小さい電圧降下でも測定を行うことは可能ですが、あまりにも微弱な値となるとノイズの影響を受けてしまうなど様々な不具合が生じてしまいます。電流検出や、信号として処理を安定して行うためには、ある程度検出電圧を大きくする必要がございます。発熱を抑えるためだけに抵抗値を小さくすることも難しいのです。

シャント抵抗の発熱対策

このように、発熱の影響を考えると大電流の検出に使用することが難しいように感じるシャント抵抗ですが、近年は素材の改良や使用方法の工夫により大電流の測定にも活用されることが増えてきました。こちらではシャント抵抗の発熱対策についてご紹介させていただきます。

シャント抵抗の素材の検討

シャント抵抗の素材を工夫することで、発熱を防ぐことも可能です。同社がご提供しているシャント抵抗は「電子ビーム溶接」という特殊な技術を用いて銅とマンガニン抵抗材から製造することが可能です。このシャント抵抗は抵抗温度係数と熱起電力が極めて小さいため大電流の電流測定にも対応が可能です。

放熱部品による工夫

発熱部分の下部や基板上にヒートシンクと呼ばれるような放熱部品を取り付けることで、放熱性能を大幅に向上させることが可能です。熱伝導率の高い材質を用いて表面積を大きくすることで放熱量を増加させる方法が一般的でしたが、基板や回路設計を行う上でサイズアップはデメリットとなってしまうため、放熱性とサイズをうまく両立させる必要があります。

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