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シャント抵抗器と電流測定

自動車のEV化や、コロナウイルス蔓延による巣ごもりでの電気使用量の増加など、電気の需要量は年々高まってきております。国からも節電の依頼が発せられる状況にもなっておりますが、皆様「電気」について深く考えられたことはございますでしょうか。何気なくお使いの「電気」ですが、最適にご使用いただくために、様々な場面で電流の測定が実施されています。

電流測定とは?

電流測定とは、電気機器や電力設備の消費電力を測定する電気計測の一種です。電流測定は測定を行う対象の機器や、電流の大小により最適な計測方法が変わってきます。そんな電流測定ですが、実は皆様の周りでも様々な場面で実施されています。身近な事例としてはご家庭の電力メーカーが挙げられます。日々の電気使用量を測定し、電気代の算出を行います。

また、工場での多くの場面で活用されています。モーターやインバーターなど産業機器では、電流を常時モニタリングすることは安全面、機能面、そして効率面から非常に重要です。電流を測定しておくことで正常に機械が稼働しているかを確認し、異常が発生した際に迅速に対応することが可能となるのです。

電流測定の難しさ

電気計測の中でも、電流測定は電圧測定などに比べると少し手間のかかる測定となります。電流測定に手間がかかる理由の一つに、「計測器を回路に直列に接続する必要がある。」点が挙げられます。電圧を測定する場合は、電圧系を回路に並列に接続することで測定ができるため、既存の回路に手を加えることなく、後付けでも簡単に対応が可能です。

しかしながら、電流を測定する場合は、電流計を回路に直列に接続する必要があるため、回路を一度切断し計測を行った後再度接続を行う必要がございます。このため電流を測定する多くの場合には、回路内にあらかじめ抵抗を接続しておき、その抵抗の両端における電圧降下を計測することで、電圧の計測を電流の計測に置き換えるという手法が用いられます。

この際に用いられるのが「シャント抵抗」といわれる抵抗です。電流の検出方法としては実装しやすいためメジャーな手法となっておりますが、抵抗によって電力が損失してしまう点や、オームの法則による発熱量が大きくなってしまう点がデメリットとして挙げられます。これらのデメリットも考慮した回路設計が必要となります。

シャント抵抗を活用した電流測定

シャント抵抗を活用した電流測定については、既に簡単にご紹介させていただきましたが電流検出回路に直列に抵抗を接続し、その抵抗の両端における電圧降下を測定することで電流に換算します。オームの法則に従い、検出回路の電位差Vを測定することで、抵抗値Rから回路電流Iを算出します。オームの法則を用いて扱いづらい電流を扱いやすい電圧に変換しています。

このように測定原理が非常に単純でわかりやすいため、回路設計時の計算が容易であり、電流センサとして広く使われています。抗値は百μΩから数百mΩまで幅広いラインナップを有していることが特徴です。電流測定の難しさでもご説明させていただきましたが、抵抗値が大きくなると発熱力が大きくなり、回路設計が難しくなってしまうため、できるだけ低い抵抗値のシャント抵抗を使うことが理想的となります。

しかし、あまりに小さい抵抗値を接続すると、電圧降下の量も小さく、電圧の検出が難しくなってしまうため、「オペアンプ」といわれる増幅装置と共に利用し、回路設計を行うことが一般的です。このようにシャント抵抗とオペアンプで構成される電流検出方式のことを「電流センスアップ方式」と呼ぶこともあります。

シャント抵抗を活用した電流測定のメリット・デメリット

これまで、電流測定について基礎的な知識から計測方法までご紹介させていただきましたが、ここでは「シャント抵抗を活用した電流測定のメリット」について掘り下げてご紹介させていただきます。

メリット

  • 直線性
    シャント抵抗は回路に対して直列に接続できるため、非常にシンプルな回路になります
  • 温度係数
    温度係数が低い(優れている)ので、比較的周囲の温度変化の影響を受けづらい特性を持ちます。車載等で使用する場合は、エンジンの始動の前後やアイドリングストップ時、走行時など激しい温度変化が生じますが、シャント抵抗であれば精度の高い電流検出が可能です。
  • 長期安定性
    単純な構成の為、すぐれた長期安定性を実現します。
  • コスト
    他の電流測定方式に比べてコストメリットが出ることが多いです。
  • ノウハウの蓄積
    シンプルでメジャーな電流測定方式であるため、古くから活用されノウハウの蓄積が期待できます。

デメリット

  • 電力損失
    電圧降下により電流を測定する性質上、電力損失が発生してしまいます。
  • 発熱性
    抵抗自体が発熱してしまうため、設計時に抵抗値と発熱性を考慮する必要があります。

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