電流検出の用途
電流を検出する用途は、次の3つに分けることができます。
過電流検出
回路の故障や過負荷状態などによって通常よりも過大な電流が流れた場合に、安全のために回路動作を止める必要があります。設定値以上の電流が流れた場合に異常と判断し出力を遮断します。
過電流検出に必要な回路の回路図、アンプ、コンパレター、シャント抵抗の選考ガイドなどの情報は、テキサス・インスツルメンツ社やアナログ・デバイセズ社など半導体メーカー各社のホームページ上で閲覧可能です。
電流制御
ショートなどによりDC/DCコンバータからの出力電流が想定以上に大きくなった時に、電源ICやシステムの故障を防ぐために出力を停止します。過大な電流が流れ続けることによる、電源ICの特性の劣化、動作不具合、破壊などの不具合を防止します。
また、三相モーターを回転させるためには、電流の位相や時間などを正しく制御する必要があります。そのため、各相に流れている電流を検出して制御回路へフィードバックしています。EPS(電動パワーステアリング)やエアコンなどで多用されます。
電流管理(バッテリーマネージメント)
二次電池で動作する機器は、残量の把握や長時間使用が可能となるよう、電池に流れる電流や電圧を検出し最適な回路動作の制御を行なっています。
上で記載した3つの用途を表にまとめたものが以下になります。
上の表からもわかるように、過電流検出、電流制御、電流管理が不要な電気機器はありません。具体的にいくつかの例を挙げながら、見てみましょう。
電流検出の具体例
上記の通り、過電流検出、電流制御、電流管理が不要な電気機器はありません。具体的にいくつかの例を挙げながら、見てみましょう。
電流検出の用途:車載
ドライブ・バイ・ワイヤーの流れに沿って、機械式(油圧)制御から電気信号による制御に置き換わっています。
変速機、ステアリング、ブレーキ、シート、ウィンドウ、全ての機器がモーターで制御されていると言って過言ではありません。モーターの回転制御、過電流からの保護、これらには全て電流検出が必要です。
またxEVに使用されるバッテリの管理(残量、充放電制御)にも電流検出は必須です。
電流検出の用途:スマートメータ
スマートメーターの計量部では、課金のために電流量を計測したり、電力消費に関するデータ収集のための電流検出にシャントを含む電流センサーが使用されています。
電流検出の用途:産業用ロボット
自動車の組み立てなどに使用される産業用ロボットは、何か所もの関節を動かし複雑な動作を行います。その複雑な関節の動作を支えているのがモーターです。過電流からの保護、モーターの回転スピードの制御などに電流検出が必須になります。
電流検出の用途:無人搬送機
無人搬送機にはモーターと二次電池が使用されています。二次電池の残量把握、充放電の最適制御に電流検出は必要です。
電流検出の用途:白物家電
エアコン、冷蔵庫のコンプレッサー、洗濯機など白物家電にも多くのモーターが使用されています。電圧変換にDC/DCコンバータもインバーターも使用されています。
電流検出の用途:太陽光発電
太陽光発電パワーコンディショナーでは、発電効率を最大化するための MPPT (Maximum Power Point Tracking) 制御と、回路短絡時の過電流検出のために電流検出が必要となります。
ここまで電流検出が必要な代表的な用途を挙げてきましたが、そこに必要な検出方法はシャント方式だけではありません。またシャント抵抗にも厚膜抵抗器、モールドタイプ、金属板タイプ、大電流タイプと選択肢が多くあり、用途によって適切なタイプ(形状、素材、抵抗値、公差、TCRなど)を選択する必要があります。